免田栄の死刑冤罪を救った切支丹

 

「免田栄 獄中ノート―私の見送った死刑囚たち」 2004/8/1

を読んだ。

1948年(昭和23年)12月30日に熊本県人吉市で祈祷師夫婦(76歳男性・52歳女性)が殺害され、夫婦の娘2人(14歳と12歳)が重傷を負わされ、現金が盗まれたという事件で、翌1949年1月13日に熊本県球磨郡免田町(現・あさぎり町)在住の男性・免田 栄が逮捕された。

凄惨な拷問を受けて自白を強要された。

免田栄は12月29日の夜には、人吉駅前の宿屋の女の部屋に宿泊していてアリバイがあったが、その女は、宿泊したのは12月30日の夜と偽証したことなどから、死刑判決が出た。(1950年(昭和25年)3月23日)

弁護士は金目当てで、検察側と協働し被告人に不利な弁護活動をしている。

 

戦時教育の影響もあり、免田栄は切支丹(キリスト教)を嫌っていたが、獄中で定期巡回してくる牧師に再審手続きの教示を受け、聖書の警句中に希望の光を見出した。

再審請求をしては妨害され、棄却され、再審請求を繰り返して1979年(昭和54年)9月27日に再審開始の決定が出た。
1983年(昭和58年)7月15日に熊本地裁八代支部は無罪判決を出した。免田栄は逮捕されてから34年6か月後に釈放された。

国から9,071万2,800円の刑事補償金が支払われた。

冤罪を生み出した理由

免田栄の冤罪を生み出した理由は次の通り。

  1. 裁判官の独立が侵されていること。裁判所が検察に従属していること。裁判官が奴隷状態にあること。
  2. 弁護士が非力であること。弁護過誤、背信活動を行っていること。
  3. 検察・警察に、証人が偽証をそそのかされること。
  4. 検察・警察による拷問と自白の強要。
  5. 佛教の因果律の教義が誤審の受容を強いること。それが冤罪死刑囚に再審請求を断念させること。
  6. 天皇からの拝命思想。
  7. 劣悪な正義感覚・人権感覚。

 

そして死刑確定者にとって致命的なことは、日本人が宗教に弱く、歴史的にも権力に癒着している宗教家が、因果律の観念思想を吹き込む。その虜となり、そこから這い出る努力をしない。よく、「仕方ない」と言う声を聞いたし、「死刑確定していていつまでも手数を煩わせるな」と言う声を聞く。毎週、教識師が来て説かれる説法は因果律で、前世において死刑囚になる因を持っていたから現世において死刑囚になっている、故にそのままの姿で処刑されねば救われない、とまことしやかに説かれては、宗教に弱い臆病な者は確定判決に不服があっても再審をあきらめるしかない。つまり司法と宗教界が1体となり裁判の不公平を抹殺していると言っても過言ではない。P139

免田栄が再審無罪を得た理由

デロリー神父は毎土曜日、大きなバッグを提げて教詩へ来られる。
(… 中略 …)
日本語のうまいデロリー神父とウイキリンソンという二人の宣教師のユーモアたっぷりの話に忘れていた笑いを取り戻した。
 
教誨が終わったあと、帰り際に「皆さん、死ぬことは簡単ですが、生きることは難しい。隣りの方は(隣の福岡刑務所内に西舎と北舎に旧法の死刑確定者が収容されていた)再審を請求して五年も一〇年も生きておられる。皆さんも再審を請求して長く生きて下さい」と話された。 神父さんのこの言葉は私に希望を蘇らせた。私はこの再審という法の続きがあることを教わって、今まで落ち込んでいた心に活気がわいた。私もやろう、再審をやらぬといつ殺されるか分からないと思った。
 
刑務所には、収容者のために相談する者がいることを聞いていた。再審の件で面接をしたいと願い出たが、所長が「死刑囚は静かに処刑の日を待つこと」を建前に、会わせてくれない。 刑務所の確定死刑囚には再審活動を許し、拘置所の者には再審を許さんことは不公平だ」と言うと、これが暴言だと決めつけられて懲罰をくらい、毎日落ちつかぬ日を過ごした。
ある日、チラシが一枚入ったので、何気なく取って読んだ。ガリバン刷りで、かすれた文章のなかほどに1行半ほど読める所がある。そこには、「死のかげの谷をあゆむとも禍害を恐れじ、なんじ我とともに在せばなり、なんじの智となんじの杖われを慰む」と記してある。この文句 が自分の立場に似ている何か別の世界に尊いものがある。その論通しだと思い、苦行に入った。 そして数日、寝食も忘れて通し、得たものは言葉に言い現すことのできない心界の世で、このとき、死の恐怖を乗り越えた。
 
そして「自分がやれることは、やってしまおう」と思った。そして再審手続きを学びたいから六法全書をして下さい、と改めて願い出た。だが、一度不許可にしたことで現場が面子に こだわり相手にならない。ちょうどこの頃、職員の配置換えがあった。医務担当で巡回治療し ていた有田看守が、死刑囚係に来たのである。「君がそんなに再審を請求したければ、仲介してやるから」と言って、一二時から一時まで、この休み時間のみ廊下向かいに入っている江藤徹 さんに相談することを頼んでもらった。
 
金もない、弁護士もない、しかし再審請求だけは
この日から毎日江藤さんの独房に入り、小机を前に再審の手続き指導を受け、夜は自分の房で一日五枚配給があるチリ紙に、再審に必要な事件顛末書の下書きをした 事件顛末書は、自分の生い立ちから現在に至るまですべて綴る必要がある。この作業がこの ときになったのは、金がなく罫紙や便箋を求めることができなかったからだ。この事情を知った友人の被告人たちが援助してくれ、このとき初めて一審から上告までの自選弁護士で、金はとるが弁護活動をしない本田弁護士から裁判記録を五千円で分けてもらった。そして日夜とおしてこの記録を読み、この裁判は裁判官の公務怠慢で私を死刑処分としていることがよく分り、暗い独房住まいに一線の光を見て勇気がわく。 P74

 

切支丹との出会い、入信。佛教の因果律の回避。正義を追求。

 

逮捕されたら、拘置所・刑務所内では佛教的な因果律、輪廻転生説は厳禁にすべし。

 

もしも免田栄が経験な佛教徒だったら、もしも切支丹との出会いがなかったら再審請求の道を歩めなかったかもしれない。

 

私の再審請求には二度反応があったが、二度目、すなわち第六次再審請求の即時抗告は、福岡高裁の山本茂裁判長の係で、約二年間審理された。結審まぎわに、山本裁判長が裁判所、検 察側、弁護側の三者の会合で、検察側に「この事件には指紋はあるか」と問われた。この一声に、事件から三〇年間、現地調査すらせずに権力にあぐらをかいていた検察側が総出で、あわてて現地調査を行った。P140

 

 

 

  • 2681年4月22日

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